調査1) 昨年度はワーカの記述による日誌記録調査と主観による知的活性度記録調査の分析を行った。本年度は、より客観性を高めるべく、実オフィスでの行動観察記録(客観)と知的活性度記録(主観)との関係を分析した。調査対象は、2オフィス、計13名のワーカの各2日間である。分析から、ワーカが「気分転換になった」と認識した行動の6割以上が執務外行動であることを確認した。その他、オフィス毎のワーカの行動様態を特徴付けているのも執務外行動によるところが大きいことや、対面コミュニケーションの知的活性度向上への寄与を確認した。 調査2) 昨年度の生理信号計測調査の成果に基づいて、本年度は、実務に近い状況下=模擬オフィスでの実験(被験者3名、各2日間)を実施し、a)脳波・心電・体温・眼球運動の計測、b)30分ごとの主観評価による知的活性度(覚醒度・疲労度・集中度)及びモチベーション(仕事への気力)、c)行動観察記録、3つデータを採取した。分析の結果、「差温(体幹皮膚温度-末梢皮膚温度)」によって知的活性度やモチベーションの変化を客観評価できる可能性が、昨年度の調査よりもより高い確度で示された。また、知的活性度やモチベーションに対して行動制約の有無の影響が大きく、切り替え行動の種類によって差温変動パターンに違いがみられたことから、「差温」によって切り替え行動の質を客観評価できる可能性を示した。これにより、比較的計測が容易な「差温」情報によって知的活性度やモチベーションの(1日を通した)低い周波数変化と各行動によるより高い周波数変化の定量化可能性が示された。 以上の成果は、未だ途上であるオフィスにおける知的生産活動の定量的・客観的な評価の実現、そして、ワーカが無理なく知的パフォーマンスを発揮できる環境づくりに対して寄与するものである。
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