本研究では、医療制度改革に伴って個室ユニット型施設への転換が行われた療養病床の事例、A病院の増改築過程について調査分析を行い、以下の知見を得た。 まず、多床室型施設から個室ユニット型施設への転換は、老人病院時代から約17年の年月をかけて達成されていた。当初は施設基準を満たすための改修が中心であったが、1997年からは小規模な改善、2002年からは増築を伴う大規模な改善により個室化とユニットケアを導入する等、増改築の内容が高齢者や職員の療養環境の向上を目的としたものへと徐々に変化していた。 次に個室ユニット型施設への転換に向けた改修は2002年頃から徐々に行われているが、多床室主体の既存病棟では病室の個室化がまず実施され、その後、食堂や浴室等の共用空間が整備される、という2つの段階を経て個室ユニット化が実現されていた。病室の個室化は既存建物の改築という形でなされたのに対して、共用空間の整備は主に既存建物への増築という形で行われる等、改築と増築が巧みに使い分けられていた。
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