研究概要 |
本研究の目的は,豪雨災害の被災地域を対象に,災害復興において災害関係者が復興過程の時々で得る現場経験を,今後の豪雨災害における早期復興・被害軽減のための有益な情報と見なして,豪雨災害現場における復興のノウハウの共有化を目論む上で,まず災害関係者の経験を蓄積・整理し,それら経験の全体像を構図として解明することである。 前年度では(1)各災害関係資料の収集と整理,(2)復興イベントのキーワード整理,及び(3)災害経験情報のデータベース化の準備段階まで実施した。本年度では,(3)及び(4)復興イベントグラフの作成,(5)復興イベントのグラフ構造分析,を経て助成期間内の研究成果を総括した。具体的に,(3)では被災地へ赴き災害関係者(計88名)へのヒヤリング調査より災害経験情報を入手,整理して災害ヒストリーとして蓄積(計473件),各災害ヒストリーを端的に表す災害キーワードを付与(計169種)してデータベース化を行った。(4)では,災害キーワードの出現頻度やひとつの災害ヒストリーにおける災害キーワードの同時出現頻度の性格より,グラフ(災害キーワードのネットワーク図)を導出し,(5)でその関連性に関して分析を行った。 本研究で示したグラフ構造は,単純な樹状構造では表現できない復興イベントに対して,それぞれの事象の具体的内容を,災害経験情報のデータベースに蓄積された災害ヒストリーで担保しながらも,複雑な復興イベントの構造を端的に表したものであり,本研究の成果は復興イベントの有様をグラフ構造の表出によって紐解いたことにある。また,本研究の特色は,豪雨災害を対象としたこと,復興イベントの解明にグラフを採用したこと,災害経験情報の収集・蓄積のみならず情報の共有化を目指したこと,にあり,以上の点から災害研究に新たな知見を提供するものと考える。
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