土地の接収により再整備された沖縄の御嶽等民俗空間の改変パターンを沖縄県宜野湾市、北谷町、浦添市、読谷村の8集落を対象として調査し、傾向を把握した。結果は以下の通りである。 先祖崇拝と自然崇拝が一体となった宗教観を持つと言われる沖縄集落の民俗空間は殿や火の神など先祖に由来するもの、ノロ地など琉球王府時代の祭祀と関係するもの、井戸(カー)など自然の恵みに由来するもの、御嶽のように始祖崇拝と山拝みが交じり合ったものがある。このうち多くの集落で一番位が高いのが御嶽であり、御嶽のない分離集落では火の神や殿が一番高い位の拝み場所となる。 御嶽、御嶽がない集落では火の神や殿に関しては、被害を受けた場合必ず再建がなされており、事例のすべての集落で参詣されている。殿やノロ地も御嶽と同様に被害を受けたものは再建されており接収の有無を問わず現在も多くが参詣されているが、移動という概念を持たない宜野湾集落では破壊されたまま再建されず、大山集落では現在も残っている2つのうち1つは拝まれていない。土帝君、ビジュルなど明文化された由来を持つ参詣対象は再建されている。 その一方で、カーやアブ、モーなど自然物を対象とした拝みは再建される集落とされない集落に別れる。水が貴重であった沖縄地方において生活の基幹であるカーは広く一般に拝み対象であるが、アブやモーは豊年祭がされていた場所が拝み対象となったものであり、やや特殊なものである。ガマについては、昔から霊的な場所とされているところもあるが、戦争時に避難して助かったことから拝まれるようになった比較的新しいものもある。今回の調査では後者で、現在合祀され、拝まれている。 合祀では、戦前の集落の空間には無かったものが新設されている。根屋に関わるものが多いが、これらは戦前は根屋の住宅敷地内にあったものが、居住地を奪われたため新設された、移転集落特有のものである。
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