本研究では、戦後集落の住民によって整備改変された御嶽の量の協議の課程をレビューすること及び具現化された御嶽のデザインを観測することによって、聖域観念がどのように変化しているのか、また継承や保全の課題は何かを探ることを目的としている。 平成22年度は、那覇市、糸満市、宜野湾町、読谷村、南風原町の集落において御嶽等拝所空間の変遷に関わるヒアリング調査を実施した。戦後いずれの集落でも集落祭祀の簡略化や中止が行われ、年間の祭祀回数の減少や遥拝所から簡便に祭祀を済ますなどやり方が変容した。また、同時に御嶽等の拝所のもつ聖域性も変化していることがわかった。こうした聖域性の変化は、禁忌意識や恐れの欠如として表出しており、戦前の御嶽には、立ち入りを禁ずるルール、樹木の育成管理のためであっても伐採を禁ずるルール等があったが、80代、60代と代を下るごとに同じ集落の中でも継承されずに失われていく様子が確認された。これらの観念の変化と地形的特質の関係は平成23年度の継続調査課題としている。 また、改変された御嶽については整備にあたり、原型保持の観点からの議論では、香炉の格付けと方位に対する信仰のみが場の設計として意識され、空間の領域性については議論された経緯がないことも明らかとなった。空間の改変と領域性の考察では、地形的特質のほかにも都市計画法や農振法等の土地利用規制の規制条件も調査し、これらの影響も考察を進めた。糸満市の集落の結果については部分的に取りまとめ、日本建築学会に発表した。
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