沖縄の御嶽(うたき)を中心とする民俗空間は、自然拝みと先祖崇拝が渾然一体となった非常に特徴的な空間であるが、沖縄県内にある大多数の改変された民俗空間は開発調整にあたっての保全の位置づけも実際の行政指導や調整の過程では実質的な保全の手立てを持たないままの状態であった。 本研究では、都市的開発圧力の強い沖縄本島中南部に位置する基地移転集落に着目し、設計協議過程の議論や実現された空間の実測を行うことにより、戦後から現在までに地域住民のなかでどのように解釈され継承されたのかを明らかにした。その結果、風水の方位に関わる空間感覚、高所に対する神聖感、「火の神(ひのかん)」「根家(にーや)」など先祖崇拝に直接関与するものは継承されたものの、拝みや禁忌性を介した自然との精神的な関わりは変質してしまったことが明らかとなった。
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