平成21年度は、申請者らが提唱する「京間型スケルトン・インフィル住宅」について、実施設計レベルまでの設計を進め、SI住宅のシステムとして完成させた。具体的には、実際の分譲集合住宅の条件に基づき、意匠設計を行うとともに、構造計算に基づいた躯体の構造設計および躯体の生産方式の検討を行った。躯体システムは、プレキャスト鉄筋コンクリートによるラーメン構造であるが、柱には壁柱を、梁にはh=300の扁平逆梁を採用している。壁柱の採用により、インフィルパネルとの寸法計画上の整合性を高めることが可能である。また、逆梁の採用は、インフィルパネル、および横引き管・ダクト等設備配管のレイアウトの自由度を損ねないためである。ただし、立体骨組み解析による構造計算の結果、壁柱のみでは保有水平耐力が不足することが明らかとなったため、戸境壁となる位置に、適宜耐震壁を設けている。 さらに、これに基づいたコスト検討を行い、複数以上のプロジェクトの実現の見通しが立てば、プレキャストコンクリート躯体の採用について、コストメリットが見いだせることを明らかにした。また、インフィルパネルの詳細設計を勧め、施工性や納まりの検討を進めた。パネルの資源再利用効率についても兼用を進め、申請者らが提案するシステムに付いて、ある程度の温室効果ガス排出量低減効果が見込めることが明らかになった。 昨年度の成果および以上の検討結果の一部については、平成21年度日本建築学会大会において、2編の研究発表を行った。また、本研究により得られた知見の一部を、日本建築学会計画系論文集に投稿し、採用が決定した。
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