研究概要 |
本年度の研究成果は以下の3点である。 1. 実際の生活空間の中に配置されているさまざまなモノに対してRFIDタグを貼付し、被験者となる生活者らに指輪型RFIDリーダを装着してもらい、接触動作履歴を取得する実験を行った。この実験は全部で20名の被験者らに対して実験を実施し、おのおの7日分のデータを取得した。RFIDタグのような情報通信技術を用いたことで、これまでの調査手法による場合よりもより効率的かつ大規模・長期間に実験を実施することが可能となった。 2. 1で得られた履歴データに基づいて、接触動作特性の分析をおこなった。その際にネットワーク科学の知見を応用し、モノをネットワークのノードとし、接触のつながりをネットワークのリンクとする表現を用いた。また、分析についてもグラフ理論・ネットワーク科学の手法を応用することで、中心性などの指標値をもとにして被験者の特性を類型化することができた。詳細な分析などは次年度に計画されている。 3. 1, 2でもちいたRFIDタグによる手法だけでなく、近年登場した人体通信技術を活用した手法にも取り組んだ。送信機を持った人の接触動作をモノとの接触を介してと照えることができることを応用し、在室場所の特定を行う実験を行った。また、この実験データから、居室空間内の什器の最適配置計画を行うプログラム開発も行った。 いずれの実験成果も、人間の行動を新しい情報通信技術(ICT)によってとらえ、そこから行動特性を抽出するということを目指している。行動をとらえるということは過去に多くの研究成果があるが、ICTを駆使した研究については現在多くの分野で端緒についたぼかりである。日本建築学会においては、2009年度から「情報システム技術委員会情報社会デザイン小委員会行動センサリングWG」が発足し、本研究の成果は建築分野における当該領域研究に対して資する研究となると考えている。
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