これまでの研究において、(1)RFIDタグを用いた生活空間内での人間行動の観測(平成20年度)、(2)「UciNet」などのネットワーク解析ソフトを用いた接触動作ネットワークの解析(平成21年度)を実施し、また、(3)RFID以外の技術をもちいた人間の接触行動の観測(平成21年度)にも取り組んできた。これらは当初計画されていた技術や方法だけはなく、日進月歩に進化する技術的背景を受け、その段階ごとに最適であると判断された方法を常に採用してきた結果である。当年度は研究期間の最終年度に当たるため、以下に挙げる成果だけでなく、全体の見直しや今後の取り組みなどの再検討を含め、総合的な視野で研究を行った。 まず、当初計画していた内容については、「Artisoc」を用いて生活空間内における居住者の接触動作行動のシミュレータを開発し、これに基づいた居室内行動シミュレーションの結果から、居室内での行動予測に基づいた建築計画の評価を実施することが可能となった。シミュレータの頒布については、現時点ではウェブサイト上にて行うことを検討している。 これらの結果に加え、住宅内でありふれた建材である「窓」と居住者との接触動作に着目し、その動作習慣と室内環境との関連について明らかにする研究も実施した。この研究結果においては、近年注目され始めたOSHW(オープンソースハードウェア)の考え方を導入し、RFID技術のように高価で成熟した技術を用いるだけではなく、安価でシンプルなセンサを多数活用することで、「スマートハウス」の実現に向けたハードウェアインフラの整備についても検討を実施した。
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