本研究は、ヒトとモノとの接触場面を種々の情報通信技術を用いて捉えるというテーマを中心にして、大きく3つの内容に分けられる。 1つめは、RFID技術を用いて生活財としてのモノとヒトとの接触を捉え、その行動をネットワーク図として分析を行うことで行動特性を分析し、これにより得られたモデルを用いて居室内でのヒトとモノとの接触動作シミュレーションを実施するという内容である。2つめは、人体通信技術という新しい技術を用いてヒトとイスとの接触(着座行動)を捉え、これを用いて什器の動的配置システムを試作するという内容である。3つめは、オープンソースハードウェアのひとつである「Arduino」をセンサー端末として活用し、ヒトとマドとの接触(窓開閉行動)を捉えることで、室内環境と窓開閉行動との関係を分析するという内容である。 このように、新たな技術を用いることで、ヒトを取り巻く様々なモノとの関係を詳細かつ断続的に記録することが可能であることが実証された。これは知的な建築環境が人間をサポートするというビジョン、すなわち「スマート空間」のための基盤技術がすでに整っていることを示すものであり、ハードウェアとしての技術と、ソフトウェアとしての住空間サービスの両方を試作し、実証したという点が本研究の成果である。
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