本研究は、重篤な病気や障害によたて臥床生活を余儀なくされる罹病者のための療養環境を明らかにすることを目的とし、その対象者としてALS(筋萎縮性側索硬化症)患者に焦点を当て、臥床者の視点で見た「空間の役割」を明らかにすることを機軸に置いている。臥床者の視点で研究を行うことにたいては、様々な研究者らが試みつつも、認知症や様々な障害によたて発話が困難な場合が多く、当事者に対して意見を求めることができないという困難さがあった。そのため、介護者の視点からの療養環境整備が進められ、臥床者の視点での整備が取り残されてきたという現実がある。その点、本研究はALS罹病者を対象とすることにより、臥床者の視点を浮き彫りにすることが可能となった。 20年度はフィールドワークを機軸に置き、在宅と施設の両面から調査を行った。在宅調査は、近畿地方と東海地方のALS協会へ協力を依頼し、実際に患者が住まう自宅へと訪問し、計測調査ならびにヒアリング調査を実施した。施設については、2施設へのヒアリング調査と訪室頻度・実測調査を行った(内1施設)。施設の調査結果は分析中であるが、在宅にたいては(1)人工呼吸器を装着しているALS罹病者21名のうち、発症後に住まいを変更している人は20名でその割合は非常に高い。変更内容は、新築4名、転居2名、増築4名、改修8名、模様替え3名であり、増築・改修をあわせると過半数を占めていること、(2)主要階の住宅面積と住まいの対応(増築・改修・新築)に大きな関係はみられなかったが、見守りやすくするため全ての間仕切りを外しワンルームとして使用する例などが確認されている。
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