本研究の目的は、工学教育擁立期より発達期における建築教育の実態を探ることで、近代工学および建築の認識や学の成立過程を解明することにあり、平成20年度より平成23年度にかけて、計4ヶ年で実施する。3年目である平成22年度は、2年間の成果を踏まえた上で、分析を充分に進めることができなかった翻刻作業を継続すると共に、計画当初には想定をしていない資料群が新たに発見されるなどの状況変化があり、これらの状況を踏まえ、適時研究計画を修正、調整することで、研究活動を遂行した。 研究実績は以下の通りである。1.本年度研究計画の作成 昨年度実績を踏まえ、今年度の研究計画を再検討した。2.翻刻作業 東京芸術大学図書館所蔵の東京美術学校生徒講義録、昨年度調査を行った小場恒吉の講義録の翻刻作業を行った。3.図学教本の整理分析 第一高等中学校、工部美術学校、工部大学校などで使用されていたと考えられる図学教本の分析を行った。4.史料調査 1)日銀金融研究所所蔵の長野宇平治史料の調査を行った。2)旧工部大学校所蔵史料のうち、輸入大工道具の調査を行った。3)旧備品台帳のうち、画手本、写真帳などの分析を行い、現存史料との照合、検討を行った。さらに、当時の学生達の実際の模写、デッサンなどの資料群との照合を行い、教本の使用状況、流布、位置づけなどに関し検討を行った。
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