滋賀県彦根市や近江八幡市にある町家の中には、表側から二筋目以降の部屋の上部をツシとして使用する例(以下、「横向きツシ」と呼ぶ)が確認されている。このツシは、トオリニワに面し、トオリニワとの境に仕切壁を持たず大きく開口している特徴を持っている。そこで、本研究の目的は、(1)滋賀県全域での横向きツシを持つ伝統的町家の把握と地域性、(2)横向きツシの分類と横向きツシを含めた町家二階部分の形成過程の分析、(3)横向きツシを持つ伝統的町家と農家の関係、を探ることにより、横向きツシを持つ伝統的町家について明らかにすることである。 今年度は、昨年度リストアップした横向きツシを持つと思われる町家の中から滋賀県湖北・湖東地域と対象として、1.横向きツシの空間特性の抽出、2.横向きのツシを持つ町家の特徴の抽出、を予定していた。1.については、すでに取り壊されたり、町家所有者の調査協力が得られない事例があり当初の予定よりは進まなかったが、昨年度の文献調査では挙がってこなかった町家を他の調査(伝建調査など)で見つけることができたので、リストに追加した。また、現在調査済みの町家のデータ整理を行った。2.については、近隣の旧城下の町家や近隣農村部の民家の特徴を文献などにおいて整理し、横向きのツシを持つ町家との比較分析を試みた。 次年度においては、当初、滋賀県湖西・湖南地域の町家を対象としていたが、A.当該地域のリストアップされた町家数が少ない、B.湖北・湖東地域の調査が遅れている、ことを勘案して、引き続き湖北・湖東地域を中心に調査を進める予定である。
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