研究概要 |
本研究では, 「内国植民地」と呼ばれた沖縄や北海道も含め, 全ての戦前期の旧植民地諸地域で営まれていたほぼ唯一かつ大規模な産業であった製糖業に着目している。まず, 現地調査や文献調査などにより, 沖縄や北海道を中心に日本各地, 南洋群島, 台湾, 朝鮮, 樺太ならびに「旧満州国」における製糖工場とそれを取り巻く社宅街の建設と発展過程を明らかにしようと試みている。次いで, これらの比較を行うことを通して, 製糖業に係わる建築活動という指標あるいは評価軸で, 旧植民地諸地域といわゆる「内地」における当時の建築活動のそれぞれの地域での特質性や相互の同質性を明らかにしようと試みている。 本年度は, まず, 戦前期における製糖業に関する各種資料/史料の収集に努めた。財団法人糖業協会所蔵史料の閲覧・複写の他, 沖縄県西原町立図書館所蔵史料の閲覧・複写などを行い, 大日本明治製糖株式会社を訪問し, 聞き取り調査を行ったほか, 各社の社史についても収集に努めた。次いで, 沖縄県の製糖業に焦点を当て, 特に大東島における旧東洋製糖(のち大日本製糖)の社宅街の復原を行った。また, これまでの研究成果も利用して, 南洋群島における旧南洋興発の社宅街の復原も行い, その成果を平成21年5月刊行予定の『社宅街企業が育んだ住宅地』で分担執筆した『南洋群島』で発表する予定である。また, 南洋群島における資料収集の成果を, 同じく5月から1年程度に分けて刊行予定の『復刻版南洋庁公報』として発表する予定である。また, 旧鈴木商店(のち大日本製糖)大里製糖所に関する史料の収集も行っているが, 当時の工場とそれを取り巻く社宅街の全貌を未だ明らかにできてはおらず, 今後の課題である。
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