研究課題/領域番号 |
20760434
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
ウーゴ ミズコ 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (80470029)
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研究期間 (年度) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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キーワード | 歴史的建造物 / 保存 / 修復 / 無形遺産 / 文化財 / イタリア / 伝統的技術 |
研究概要 |
本研究は、現在、有形文化財として理解されている歴史的建造物の無形的な要素に注目するものである。ここでいう無形的な要素は、伝統的な建築知識や技法のことを指すが、それらは日本と他文化圏(とくにイタリアをはじめとする西洋諸国)とでは、異なる認識で解釈されていることを出発点とし、文化財建造物保存行政において、伝統建築の技法や関係知識がどのように法的に認められるようになったのか、あるいは認めようとしているのか、最終的には認識の違いの根底にあるものを明らかにする。 これまでの作業で、日本の文化財保護法の枠組みの中で選定されているいくつかの保存技術を参考にし、その継承のための保持者や保存団体の役割を調べ、海外においては保存技術の保持者・団体の決め方に難点があることが明らかになった。国内および海外調査、専門家との意見交換を行い、ユネスコやイコモスといった国際関連専門組織の出版物や活動内容を分析した。その結果、伝統的な建設技術の再発見の傾向が確認できたと同時に、地域によっては現在の主要な建設活動と切り離されている事実も分かった。特に2003年のユネスコの無形文化遺産の保護に関する条約の採択は、西洋において無形文化遺産に対する意識を高め、その法的な保護よりも、まずは文化遺産の中での無形文化遺産の位置づけに関する議論のバネとなっている。しかし、それ以前に、伝統的建築技術への関心は専門家の間で既に普及しており、新築のみならず、保存修復の現場でもその再現は進められていたことが分かった。その歴史的なルーツは、20世紀前半の建築デザインに見られるのではないかと、現段階では予想している。例えばイタリアでは、農家の伝統建築技法や建設材に関して、モダニズムを代表する建築家が調査や研究を行っていたことは良く知られている。しかし、ここで明らかにしたいのは、保存修復事業での伝統的な建築知識の利用と真正性との関連性であり、これが今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね計画通りに進んでいるが、海外の資料の収集をさらに重点的に進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの作業に引き続き、日伊比較考察として、日本の「文化財保護法」が定める文化財の保存技術の選定、保持者や保持団体制度の可能性を深めると同時に、新しく建設される建築物における伝統技術、そして保存修復現場における伝統技術の認識と活用について研究を進める。歴史的建造物の真正性と伝統技術の再利用についての関係を明らかにすることも急務の課題である。
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