当該年度は、昨年度までの研究によって明らかとなった、横須賀製鉄所の煉瓦寸法規格の源流がブレスト海軍工廠にあった史実に立脚して、特に、煉瓦製造技術に関連する資料の収集と翻訳を進めた。横須賀製鉄所製煉瓦とブレスト海軍工廠製煉瓦の共通性については、一部、学会で成果発表を行っているが、今後、関連資料の解読と分析を進めた上で更に成果発表を行う予定である。また、横須賀製鉄所に勤務したフランス人子孫の調査では、会計課長モンゴルフィエの子孫宅を3軒訪問し、幕末明治期の横須賀製鉄所オリジナル写真アルバム、首長ヴェルニー(親族にあたる)の肖像を含む家族写真アルバム、文献資料等を複写した。モンゴルフィエは横須賀製鉄所の記録作業も担当していたこともあり、本事業で収集したもの以外にも数多くの資料が伝来するものと推測されるが、資料の所蔵元については、モンゴルフィエ家の博物館に一元化される事も無く、幾つかの子孫に分散している事が確認出来た。本事業では、これまで知られてこなかった関連写真や資料の存在も確認できたが、複写した資料は部分的に留まっており、資料所在情報の全体像把握には課題が残されている。首長ヴェルニーの子孫宅の調査についても3家族を調査し、補足調査と資料利用に関する手続き等を行った。首長ヴェルニー家伝来の資料群については、一部がアルデッシュ県の公文書館等でマイクロフィルムの公開が開始されたものの、その量は膨大であり、かつ、全てが網羅されていないのが実情である。本研究では、マイクロフィルムの全資料の写真接写を行ったが、研究テーマに関連する物を厳選して部分的に解読を進めた。副首長ティボディエの子孫についてもまた、3家族と面会調査し、明治初期の横須賀製鉄所の写真資料の複製の寄贈を受けた。これらの子孫に伝来する資料群は、幕末明治期の横須賀製鉄所とその技術を考える上で貴重な資料群であると言える。
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