研究概要 |
材料開発において, 温度や圧力, 化学組成の関数としての相平衡関係を把握することは極めて重要であり, その情報を記述するものが平衡状態図である. セラミックス系では, 基本的な熱力学データが不足していることが多く, 実験結果に基づいた状態図はほとんど報告例がない. よってセラミック材料の効率的な研究・開発のためには, 第一原理計算に基づいて熱力学量や状態図を定量的に導出することが不可欠である. 第一原理熱力学計算により状態図計算を行うためには, 格子モデルが必要であり, 適用範囲はその格子モデルにより制限される. 本研究は, セラミックス系において, 格子モデルに制限されない平衡状態図の作成技術を確立することを目指し, 第一原理計算による結晶の最安定構造の予測手法を開発するものである. 平成20年度は, 原子間および多体ポテンシャルにおける相互作用のパラメータ化を行うためのプログラム, および最適化アルゴリズムのプログラム開発を行った. また, 構造探索のための, 最適な原子間および多体ポテンシャルの比較検討を行った. 具体的には, 第一原理計算により評価された原子間および多体ポテンシャルを用い, いくつかの構造についてエネルギー計算を行い, ポテンシャルを評価した. その結果, 比較的単純な構造においては, 単純なポテンシャルにより構造安定性が再現されるが, 複雑な構造においては, 構造安定性が再現されないものも存在した. このような系に対しては, ポテンシャルを用いない第一原理分子動力学法たよる構造安定性の評価が望ましいと考えられる.
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