研究概要 |
材料開発において,温度や圧力,化学組成の関数としての相平衡関係を把握することは極めて重要であり,その情報を記述するものが平衡状態図である.セラミックス系では,基本的な熱力学データが不足していることが多く,実験結果に基づいた状態図はほとんど報告例がない.よってセラミック材料の効率的な研究・開発のためには,第一原理計算に基づいて熱力学量や状態図を定量的に導出することが不可欠である.第一原理熱力学計算により状態図計算を行うためには,格子モデルが必要であり,適用範囲はその格子モデルにより制限される.本研究は,セラミックス系において,格子モデルに制限されない平衡状態図の作成技術を確立することを目指し,第一原理計算による結晶の最安定構造の予測手法を開発するものである.平成21年度は,平衡状態図の計算手法の精度向上を目指して,手法の改善を行った.予測精度を向上させるため,従来の精度の指標とは異なり,予測精度を正しく評価しうる精度の指標を定義し,それに基づいた計算手法により,正確な精度の評価を行った.モデル系として,スピネル酸化物の規則不規則転移の計算を行った.その結果,従来の精度の指標および方法では,低温側では正しく予測することができるものの,高温側では正しく予測できないことが分かった.一方,より精度の高い計算により,スピネル酸化物の規則不規則転移が,より精度良く予測され,定義した精度の指標が,正しく精度を評価していることを示すことができた.
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