本研究では、半導体エレクトロニクスにおけるSiに対応する、酸化物エレクトロニクスのキー材料:SrTiO_3に対し、透明でかつ高い電子移動度をもち、発光するデバイスを作製することを目的とする。 昨年度までに、PLD法により超高真空中(〈10^<-9>Torr)室温で、単結晶SrTiO_3基板上に酸素欠損Al_2O_3非晶質薄膜を堆積するとその界面が金属化し、2層導伝モデルによる解析の結果、導電性界面における深さ方向の電子キャリア密度プロファイルは0.4nm程度の厚さで10^<22>cm^<-3>程度の高密度キャリア層と、数十~数百nm程度と比較的厚く、10^<18>~10^<19>cm^<-3>のキャリアを持つ導電層の複合でほぼフィッティングできることがわかった。 一方で、La/Nbドープにより様々な電子キャリア密度を持つバルク単結晶SrTiO_3のHe-Cdレーザー励起による発光挙動について調査したところ、キャリア密度が高くかつHe-Cdレーザーの侵入長(~100nm)までは試料が厚いほど発光強度が上昇することがわかった。さらに、La/NbドープSrTiO_3単結晶基板の可視領域での吸収係数はキャリア密度が高いほど大きくなることもわかった。 よって、透明で且つ高い電子移動度をもち、発光するデバイスを作製するには、キャリア密度の異なる2層のドナードープSrTiO_3の積層で得られ、低温での高い電子移動度は10^<18>cm^<-3>程度の低キャリア密度で透明性を保てる範囲で可能な限り分厚い層が担い、発光層は10^<22>cm^<-3>オーダーとキャリア密度が高く、透明性を保つと同時にHe-Cdレーザーの侵入深さとなる100nm程度の層とすればよいという指針が得られた。具体例として、0.5mm厚のNb:0.Olat%ドープSrTiO_3単結晶基板上に100nm厚のNb:10at%ドープSrTiO_3薄膜を形成することで目標を達成できる。
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