研究概要 |
平成20年はアルミナとチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)界面をモデル系とし, 界面におけるノンストイキオメトリーを原子分解能で明らかにした. 界面としては, 100原子程度で記述可能なΣ13 pyramidal twinアルミナ界面及びΣ5(310)[001]SrTiO3界面をもちいた. 無添加双結晶を作成し, HRTEM, STEM, EELS観察を行った. また, 第一原理計算により構造安定化計算も行った. Σ13アルミナ界面は酸素終端面が安定であり, 過去の報告と一致していた. 一方で, Σ5SrTiO3界面では4.4Aという剛体変位を導入した構造が安定であることが明らかとなった. 同粒界はこれまで鏡面対称を有していると考えられてきたが, 本研究によりそのことが間違いであることが明らかとなった. 本研究によりSrTiO3Σ5(310)[001]の粒界構造を初めて定量的に決定することができた. 以上のようにして得られた最安定構造を用い, 粒界近傍における欠陥形成挙動を調べた. その結果, 界面におけるノンストイキオメトリーの形成挙動は, サイトごとに異なり, そのサイト依存性の大きさは空孔形成種よって異なることが分かった.今回用いた中ではTi空孔のサイト依存性が大きいことが分かった. 構造と欠陥形成挙動, 化学結合を詳細に調べた結果, サイト依存性と界面特有の構造歪み, 化学結合には相関性があることが明らかとなった. 本年度得られた知見は界面ノンストイキオメトリー形成メカニズムを理解するための基礎となるものであり, ノンストイキオメトリー制御のための指針を与える. このことにより, 結晶界面ノンストイキオメトリー制御による材料設計の可能性が拓かれたと考えている.
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