平成20年度の研究においては金属微粒子として可視短波長領域にプラズマ振動数がある銀微粒子を用い、金属微粒子分散型散乱媒質を作製した。媒質内にレーザー色素あるいは光化学反応分子を導入しランダムレーザー発振、光記録効果の測定をおこない、系内での光の振る舞いについて考察した。 1. ランダムレーザー現象は、多重散乱により媒質中に閉じ込められた光が増幅されてレーザー発振に至る現象である。したがって系内に効率の高い発光物質を導入する必要がある。本研究ではこの条件を満たす物質としてrhodamine6G色素(R6G)を使用した。液相還元法により銀微粒子を作製した。還元条件および共存する高分子の量を適切に制御することで銀微粒子の形状およびサイズを制御することに成功した。 作製した銀微粒子をR6Gをドープした高分子フィルムに担持し、532nmのパルスレーザー光で励起することでランダムレーザー発振を確認した。レーザー発振は散乱媒質として酸化物の中で最も散乱強度が高いチタニア微粒子を担持させた場合に比べ低閾値で起こり、ランダムレーザー媒質としての銀微粒子の優位性が明らかとなった。 2. 光記録効果に関して、1の実験で用いた銀微粒子を用い、光化学反応分子としてスピロピランをドープした高分子フィルムに担持した。光記録効果測定をおこなったところ、チタニアを使用した場合の100分の1の数密度で同等の散乱強度を示すことがわかり、光記録媒質としての銀微粒子の優位性が明らかとなった。 これらの結果は原著論文2報、国際学会発表1報、国内学会発表5報にまとめた。 以上より、今年度は当初の目標どおりの結果を得ることができた。
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