研究概要 |
(Li, Mg) BCのリチウムイオン電池負極材料としての可能性を、平成20年度においては熱力学的な観点から評価したことから、本年度は速度論的な観点から評価するために、イオンのジャンプにおけるポテンシャル障壁を評価した。結晶中のイオン配置とそのイオンジャンプの種類は無数に存在するが、平成20年度の研究成果として得られた代表的なイオン配置を選択し、そこで考えられるジャンプについてイオンのジャンプを第一原理計算により評価した。第一原理計算を用いたNEB法によりジャンプのポテンシャル障壁を評価した。また、ジャンプ始状態および遷移状態における第一原理格子動力学計算により遷移状態理論に基づくジャンプ試行頻度の評価をおこなった。そして、ポテンシャル障壁とジャンプ試行頻度を組み合わせることにより、第一原理からイオンのジャンプ頻度を評価した。その結果、本研究で着目した(Li, Mg) BCは、熱力学的な観点からは負極材料として興味深いポテンシャルを有しているものの、LiおよびMgの両イオンの相互拡散が速度論的には短所であることが分かった。したがって、(Li, Mg) BCをリチウムイオン電池負極材料として利用するためには、粒径を小さくするなどの合成上の工夫が不可欠であることがわかった。
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