研究概要 |
分散粒子の表面改質を要しない簡便なトップダウン型アプローチによるシリカ/エポキシ系ナノコンポジットの創製を目指し, 当初の計画を踏まえて以下の研究を実施した。 (1) 破砕強度や孔構造が制御されたシリカナノ粒子凝集体の調製 一次粒径190nmのコロイダルシリカ水溶液を出発原料として, シリカ多孔質凝集体を調製した。得られた凝集体について, 電顕観察と水銀圧入法により孔構造を評価すると同時に, 微小圧縮試験により凝集体の破砕強度も測定した。その結果, 原料へのpH調整・無機塩添加操作により制御した溶液中のシリカ分散系の安定度が, 凝集体を形成した時の孔構造・破砕強度の主要な決定因子となることが分かった。 (2) 撹拌によるシリカ凝集体とエポキシ樹脂とのコンポジット化 プロペラレス式撹拌機を用いて, 溶媒に溶解した液状エポキシ樹脂と研究(1)にて得られた孔構造や強度が異なる凝集体を混合・撹拌し, コンポジット化を試みた。まず, コンポジット調製に適した撹拌条件やエポキシ樹脂の硬化条件, および液状樹脂中でのシリカ分散性に適した凝集体の孔構造を探索した。その結果, 本実験のようにせん断力が凝集体にほとんど伝達されない撹拌条件であっても, 多孔質な凝集体の解砕は進行し, 一次粒子レベルのナノ分散が達成された。得られた結果を総合して, 液状樹脂中での凝集体解砕機構を推定し, 樹脂の粘度(分子量)がシリカ分散性に影響を及ぼす可能性が高いことを明らかにした。 (3) 撹拌時の樹脂融体の粘度とシリカ凝集体の解砕・分散性の関係の調査 研究(2)で推定した凝集体解砕機構を詳細に検討するため, 分子量の高精度な測定が可能で撹拌時の粘度を容易に把握できるポリカーボネートを母相としたモデル系に注目し, 種々の粘度となるよう制御した撹拌条件で, シリカ多孔質凝集体の解砕・分散を試み, 母相樹脂融体の粘度と凝集体の解砕・分散性の関係を明らかにした。
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