研究概要 |
積層構造を有するFRPは, 面外衝撃等により容易に層間はく離を生じ, 大幅な圧縮強度の低下を招くなど, 構造用材料としての信頼性に課題が残されている. そのため, FRPの層間高じん化に関する研究が数多く行われている. 中でも注目されているのが, FRP層間に高じん性の微粒子を散布し, き裂進展を遅延させるインターレイヤと呼ばれる手法である. 近年では, ナノレベルの微粒子により樹脂の破壊を遅延させる試みが行なわれている. このようなナノ微粒子をFRPの層間, もしくは全体に分散する手法として, 真空補助樹脂含浸(VARTM)法を用いた方法が提案されている. VARTMは船舶等の大型構造用途の複合材料作製を飛躍的に簡易化, 低コスト化できるため, ナノ微粒子による高じん化を大型構造に適用する手法として適しており, 近年その研究が報告されている. 本研究では, ナノ微粒子が層間破壊じん性に及ぼす影響について, 破壊メカニズムの観点から検討を行なった. カップスタック型CNT(CSCNT)をVARTM法により炭素繊維基材中に分散し, CFRP積層板の層間破壊じん性に及ぼす影響を評価した. その結果, CSCNTを混練することによりモード1層間破壊じん性の向上が見られたがモードII層間破壊じん性への影響は見られなかった. 試験片の破面観察を行った結果, モードI層間破壊じん性試験では層間の樹脂が凝集破壊を生じており, その破面上に多数のCSCNTが見られた. そのため, 樹脂中に含まれるCSCNTがき裂に対する抵抗として寄与することによりModeI層間破壊じん性が向上したと考えられる. 一方, モードII層間破壊じん性試験では強化繊維と樹脂との界面破壊が主として生じており, 樹脂中にはCSCNTが観察されるものの, CSCNTが破壊に対する抵抗に寄与しなかったと考えられる.
|