a-M_nSi_<1-n>O_x薄膜の膜厚が100nm以下に減少すると、プロトン伝導率がべき乗則で増加する、いわゆるサイズスケーリング現象が発見された。a-M_nSi_<1-n>O_xは、低伝導マトリクスと高伝導パス(Bronsted酸点:-O-Si^<4+>-O-M^<m+>-O-ヘテロ結合)からなる不均一構造を有している。この高伝導パスのつながり、いわゆる'クラスター'がプロトンチャンネルとして働く。膜厚dが最大クラスターのサイズζより大きい場合(バルク状態)、伝導パスのパーコレーションは起こらない。dがζにほぼ等しくなると(臨界点)、伝導パスのパーコレーションが起こり、σは増加する。更にdが減少すると、より小さなクラスターもパーコレーションするためその数N_pはd^μに従い増加し、こうしてσのスケーリングが起こる。本研究の結果は、アモルファスイオン伝導体にはバルク平均値より高いコンダクタンスの微細構造(伝導パス)が存在することを示唆しており、a-Al_<0.1>Si_<0.9>O_x薄膜の場合、伝導パスは平均長約20nmのアルミノシリカ鎖であることが示された。更にアモルファスリン酸ジルコニウムa-ZrP_3O_x薄膜は、このサイズスケーリング理論から予想される値よりも、はるかに大きな伝導率上昇を示した。この挙動は未知のパーコレーション的イオン伝導現象であり、その詳細解明は今後の課題である。本研究の結果は、アモルファス酸化物の分子組成などを変えることにより、さらに新しい伝導率増強効果が発見される可能性が示唆された。
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