研究概要 |
本研究は、Ti合金や耐熱鋼に替わる高比強度Fe_3Al基耐熱合金の開発を目指し、(1)結晶粒微細化による高靭性化のメカニズム、(2)微細化材の600℃までの高温強度と高温安定性、(3)熱間加工プロセスによる結晶粒微細化法の3つのテーマについて研究した。 (1)κ-Fe_3AlC粒子サイズを変えたFe_3Al基合金に対して温間圧延/焼鈍処理を行い,その組織と室温強度を調べた結果、(1)粒子サイズが微細な程、温間加工中に高角及び低角粒界がより高密度に形成された。(2)室温降伏応力は炭化物粒子の微細化により向上し、延性も若干増加した。(3)(2)における降伏応力の増加は炭化物による析出強化ではなく、加工により導入された高角及び低角粒界による強化であると推察された。 (2)3水準のMo濃度を有するFe_3Al-Cr-Mo-C合金を温間加工/焼鈍処理し、その組織の高温安定性と600℃における高温強度を調べた結果、(1)0.6at.%以上のMoの添加によりM_2C微細粒子が析出した。(2)M_2C粒子は加工組織中に形成したサブバウンダリの成長を抑制する作用を有し、Mo濃度の増加に伴い再結晶温度が増加した。(3) Mo濃度の増加に伴い降伏強度の増加が認められ、その増加がMoの固溶強化とM_2C粒子の析出強化によるものと推察された。 (3)1000℃及び900℃において熱間押出を行った結果、(1)いずれの温度においても加工中に再結晶が生じた。(2)結晶粒径は50~100μm程度で、熱間押出温度の低下に伴い若干低下した。 以上より、600℃程度までの用途を想定したFe_3Al基耐熱合金の設計指針を示す。 (1)温間加工中に微細なκ-Fe_3AlC炭化物を導入すると母相の結晶粒が細分化され、低温側での強化に有効である。 (2)本合金へのMoの添加は、600℃までの降伏強度と温間加工組織の安定性を向上するのに有効である。
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