研究概要 |
研究目的 ホウ素Bを含む錯体水素化物M (BH_4)_n (n : 金属Mの価数) は、BがHと共有結合して錯イオンを形成し、その錯イオンと他の金属Mの陽イオンが結合することで安定化する。このM (BH_4)_nは、含有される水素密度が高いため、高密度水素貯蔵・輸送の機能材料として注目されている (S.Orimo et al., Chem. Rev. 2007)。水素貯蔵材料の研究を遂行するにあたり熱的安定性は、重要な要素となる。M (BH_4)_nの熱的安定性は、Mの電気陰性度X_pにより制御できることが明らかにされた (Y. Nakamori et al., Phys. Rev. B 2006) 。本研究は、 M (BH4)_nの熱的安定性とMの電気陰性度の相関から適度なMの電気陰性度をもつY (Xp : 1.22) に着目し、新規Y (BH_4)_3の合成・結晶構造解析・熱的安定性の解明を行った。 試料合成 下式に示す固相メタセシス反応を利用したメカノケミカルミリングでY (BH_4)_3を合成した。 YCl_3+3LiBH_4→Y (BH_4)_3+3LiCl 試料は、X線/中性子回折、ラマン分光、熱重量分析を用いて評価した。 結果と考察 Y (BH_4)_3の結晶構造は、高輝度X線回折 (SPring-8 BL02B2) と中性子回折 (原研改三号炉設置HFRMES (共同研究者 : 東北大学金属材料研究所大山研司准教授) から決定され、単純立方構造 (a=10.852 (1) A) で、Y^<3+>で形成される歪んだ立方体の稜に錯イオン[BH_4]^-が位置する。一方、ラマン分光スペクトルでは、1145-1340 (cm^<-1>) がBH_4のベンディングモード、2200-2460 (cm^<-1>) がストレッチングモードと同定された。 水素放出温度は熱重量分析で測定され、Y (BH_4)_3は、623Kまでに6.3mass%の水素が放出されることが分かった。
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