研究概要 |
平成20年度は極低炭素鋼(Fe-llppmC)を供試材として、巨大ひずみ形状不変加工の一つであるHPT(High-Pressure Torsion)加工により作製した、サブミクロン結晶粒バルク材の力学特性を調査した。 (1) 圧縮圧力5GPa, 回転速度02rpm, 回転回数N=>5(相当歪ε_<eg>=>45)のHPT加工により、幅300nm, 長さ600nm程度の伸長粒からなるサブミクロン結晶粒材を作製した。そのビッカース硬さはHv3.6GPaであった。 (2) 平行部長さ1mmのミニチュア試験片を用いた引張試験において、N=>5のHPT加工材では、引張強度TS=1.9GPa, 破断伸びEL=20〜30%を示した。これは、マルエージング高合金鋼に匹敵する優れた引張特性である。 (3) N=5材に比べてN=10材では、Tsに変化は無かったが、ELが1.5倍以上に増加した。また、N=5のHPT加工後200℃で熱処理した試料でも、N=5材に比べてTsの低下なくELが1.5倍以上に増加した。 (4) (3)で示した延性改善の理由は、HPT加工または熱処理により連続再結晶が生じ、高角粒界をもつ低転位密度な結晶粒が形成したことで、高角粒界により転位の回復が促進され、また、低転位密度な結晶粒で応力集中が緩和されたためであると考えられる。 (5) 応力比R=0.1の部分片振り引張疲労試験において、90%冷間圧延(ε_<eq>=2.7)材では表面粗さの影響は認められなかったが、N=5材では表面粗さの改善により疲労特性が著しく向上した。 (6) 低サイクル領域では、90%冷間圧延材に比べてN=5, 10, 5+200℃熱処理材は2倍程度の疲労強度の増加が認められた。一方、高サイクル領域では、いずれの試料も大きな違いは認められなかった。これは、強ひずみ加工したサブミクロン結晶粒材の切欠感受性が高いことが原因と考えられる。
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