金属ガラス実用化における最大の障害である脆性を克服するため、ワイヤー化形態制御法に脆性を克服した新規金属ガラスワイヤーの作製を試みた。ワイヤー化形態制御法は、ワイヤー化によって変形モードを「単一シェアバンドからマルチシェアバンド」へ移行し、良好な曲げ延性発現を達成する手法である。この手法は、「内部組織を変化させずとも、形状変化による応力場変化により、延性化と高強度化を同時発現させる」手法とも言える。さらに、ワイヤー化の達成は、材料の寸法効果による高強度化も付随効果をして期待される。本研究により作製を試みる金属ガラスワイヤーは、ガラスファイバー・炭素繊維にとって変わる新たな構造材料として期待されている。本研究の結果、Ni-Nb合金系においては2GPa超級の高強度を有する金属ガラスワイヤー、Zr合金系においては、1GPa超級のNi-Free金属ガラスワイヤー作製を達成した。いずれの金属ガラスワイヤーも、ワイヤーをペンチで挟み1Kgの重りを持ちあげる試験においても破断することはなく、実用化が可能と考えられる極めて良好な曲げ延性を示した。前者は、その高いガラス転移温度と耐酸化耐腐食性によって構造材料用ワイヤーとしての用途が、後者はステント等への応用が可能な生体用金属ガラスワイヤーとしての応用が期待される。本研究によって、金属ガラスの脆性克服法としてワイヤー化が極めて有効であることが実証され、また実用化が期待される新規金属ガラス材料の開発が達成された。本研究により得られた知見は、金属ガラスの実用化に極めて重要である。
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