本課題はペロブスカイト型反強磁性体であるBiFeO_3のBサイトの価数を制御することで局所的なフェリ磁性配列を実現し、室温以上で強磁性・強誘電性を兼備したマルチフェロイック物質を創成することである。平成21年度、BiFeO_3のBサイトにあるFeをCoで置換することによる自発磁化の発現に注目して研究を進めた。自発磁化の発現がCo不純物の影響でないことを確かめるために、高分解能透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果、Co関係の異相は形成しておらず、自発磁化の発現はCoのBサイト置換により局所的なフェリ磁性が現れている可能性が高いことがわかった。これらの成果は高い評価を受けて、4つの国内外の招待講演を行った。次の課題として、極薄膜の試料を作製し、スピントロニクスとの融合を検討し、実用的な価値を高める必要性が挙げられる。平成21年度にスパッタ装置をもちいて極薄試料の作製を既に開始し、平成21年度内に単相試料の作製に成功し、素子化の第一歩を踏み出す契機を創出した。
|