研究概要 |
H20年度に改良を行った特殊環境下熱処理装置を用いてL-605合金に対して熱処理を行った.熱処理条件はN_2ガスおよびArガス雰囲気中にて1173Kの温度で最長保持時間345.6ksとした.熱処理後の試料のミクロ組織観察硬さ測定,引張特性を評価し,L-605合金の劣化におよぼすNの影響を検討した.N_2ガス雰囲気中で1173K,172.8ksの熱処理を施したL-605合金の表層部および試料内部の結晶粒界に化合物層および析出物の形成が認められた.SEMに付属のEDAX機能を用いてそれら化合物相および析出物の元素分析を行った結果,試料表層部ではCrを主体とする窒化物が形成されており,また試料内部の結晶粒界ではWを主体とする炭化物が形成されていることが明らかになった.いずれの析出物もマトリックスと比較して非常に硬くて脆いため,これら析出物の生成がL-605合金の劣化に寄与すると考えられる. 熱処理前のL-605合金の0.2%耐力,引張強さ,破断伸びおよび断面減少率はそれぞれ466MPa,977MPa,50%および40%であった.一方,N_2ガス雰囲気中で1173K,345.6ksの熱処理を施したL-605合金の0.2%耐力,引張強さ,破断伸びおよび断面減少率はそれぞれ436MPa,848MPa,16.2%および15.3%であった.また,Arガス雰囲気中で同様の熱処理を施した-605合金およびN_2ガス雰囲気中で1173K,345.6ksの熱処理後に窒化層を研磨により除去したL-605合金にの引張特性はN_2ガス雰囲気中で1173K,345.6ksの熱処理を施したL-605合金とほぼ同等であった.これらの結果から,L-605合金表面に形成される窒化物層の劣化への寄与は少ないと考えられる. L-605合金の劣化抑制にはPtおよび同族元素による被覆が有効である可能性が示唆された.
|