研究概要 |
H22年度はN_2ガス雰囲気中で熱処理したL-605のミクロ組織の同定,機械的特性評価などを行い劣化因子の詳細な検討を行った.また,L-605の代替材として使用が開始されているInconel 625についても同様の熱処理を施し,スラスタ材料としての信頼性評価を行った.なお,いずれの合金についても熱処理温度は1173Kとし,最長1036.8ksの熱処理を施した. L-605においては,N_2ガス雰囲気中で1173Kの熱処理を施すことにより破断伸びおよび断面減少率の著しい低下が認められた.1173Kで1036.8ksの熱処理を施したL-605の破断伸びおよび断面減少率は熱処理前のL-605のそれらの値の16%および22%までそれぞれ低下した.一方,同様の熱処理を施したInconel 625の破断伸びおよび断面減少率の値は熱処理前のInconel 625のそれらの値の84%および81%であり,Inconel 625においてはN_2ガス雰囲気中で長時間の熱処理を施しても比較的高い延性が維持されることが明らかになった.また,N_2ガス雰囲気中で長時間の熱処理を施したL-605ではCr窒化物とW炭化物の形成が認められたが,同様の熱処理を施したInconel 625ではこれらの析出物の形成は認められなかった. これらの結果から,L-605の劣化(脆化)には熱処理により形成されるCr窒化物とW炭化物が寄与していること,またこれらの析出物が形成されにくいInconel 625はL-605の代替材として高い信頼性を有することが明らかとなった.
|