研究概要 |
耐熱鋼の組織変化予測に対する組織自由エネルギー法の有用性を検討するため、組織自由エネルギー法を18Cr-8Ni鋼のオーステナイト(γ)相からM_23C_6とσ相の粒内析出予測に応用し、この方法で実用耐熱鋼の析出遷移過程を予測する際の問題点を明らかにした。 Fe-C-Cr-Ni四元系のγ相過飽和固容体から平衡相のM_<23>C_6炭化物とσ相が析出するまでに現れ得る種々の組織形態を想定し、それぞれの組織形態の全自由エネルギー(組織自由エネルギー)を、化学的自由エネルギーの他に、母相と析出相の界面に起因する界面エネルギーと、析出相が整合析出した際のγ母相との格子定数の差に起因する弾性歪エネルギーの和で評価した。そして、種々の組織形態のエネルギー的階層から、エネルギー最急降下パスの考えに基づきM_<23>C_6とσ相の恒温変態曲線を予測した。 計算より求めたM_<23>C_6とσ相の析出開始線を、SUS304HTB実用鋼を透過型電子顕微鏡で観察した結果と比較すると、10万時間(約11.4年)の長時間まで計算より求めた析出開始線と実験結果はよく一致した。しかし、実験ではM_<23>C_6とσ相は粒内析出に先立ち粒界上に多く析出するので、計算でも粒界析出の効果を考慮する必要がある。この場合は、粒内析出組織と粒界析出組織それぞれの組織自由エネルギーG_<system>, i(i=粒内析出、粒界析出)と各組織の系全体に対する体積率(Phase fraction)f_iの積を足し合わせれば、系全体の組織自由エネルギーが算出できる。そして、粒径や拡散係数等の律速条件下で、G_<system>, iとf_iがどのように変化すれば系全体の組織自由エネルギーが最も早く減少するかを計算することで、粒内と粒界の両方の析出現象をエネルギー論から解析できる。
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