研究概要 |
本研究課題では,スピントロニクスを既存の半導体デバイス技術に応用し,新規不揮発性高集積ロジック回路(スピンMOSFET)への展開のために「室温で高いスピン分極率を待つことが期待されるCFAS合金を用いたSi半導体への高いスピン注入効率の実現」を目指す。具体的には完全スピン偏極した材料:「ハーフメタル」を用い,不揮発性を持つシリコントランジスタの実現に必要な要素技術の開発を行う。ハーフメタル材料の候補として,現在までにL2_1構造を有するCo基フルホイスラー合金,特にCo_2Fe(Al_<0.5>Si_<0.5>)合金(以下CFAS)を開発してきた。CFAS合金は高いキュリー点を持ち,フェルミ準位がマイノリティスピンバンドギャップのほぼ中央に位置するため,熱による影響を受けにくく室温以上でも高スピン分極率を保持できる。初年度の研究内容として,CFAS合金における高スピン分極率を得るためには,CFAS層中のD03的不規則性を,組成制御などを通して低減する方策が必要であることが示された。また,いままで高いスピン分極率を得るためには単結晶MgO基板上にCFAS層をはじめとする多層膜構造をエピタキシャル成長させていたが,これは下部層を選ぶということで本課題を進める上で大きな制限となっている。そこで,本年度はアモルファスSiO_2基板上に(001)配向したCFAS薄膜を成長させる技術も確立した。SiO_2基板上に構造最適化した強磁性トンネル接合を作製したところ,室温130%,7Kで225%の大きなTMR比が実現された。これは(001)配向が実現されればCFAS薄膜は高スピン偏極電流源として用いることが可能であることを示している。
|