構造不均一性制御された半導体量子ドット(Quantum dot : QD)を用いた広波長帯域光源の開発を実施した。目的とするデバイスは目然放出を用いた発光ダイオードと異なり、誘導放出を用いた光増幅を主体とする広波長帯域QDレーザデバイスの開発である。 QDデバイスの品質改善のために必要不可欠な構造不均一性制御技術として、アンチモン照射技術とサンドイッチ・サブナノ分離技(Sandwiched Sub-Nano Separator : SSNS)を新たに提案し、デバイス欠陥の原因となる凝集・巨大ドット構造抑制を達成した。量子井戸中にInAS QD構造を作成することで、医療光学に適した長波長(Thousand-band ; 1000-1260nmと0-band ; 1000-1360nm)発光か期待される。しかし量子井戸上にQDを形成するときに、巨大な不均一構造か多く形成され、デバイス劣化が問題となっていた。そこで量子井戸とQD間に数分子層のGaAsを挟むこと、つまりSSNS技術を提案した。その結果、巨大ドット構造が劇的に抑制され、世界最高級密度に近い大幅なQD密度向上(約8×10^<10>/cm^2)が達成された。SSNS構造はナノ構造間に数分子の構造分離層を設けることで表面改質およびナノ構造間の負の相互作用を抑制する技術であり、他材料系への汎用的利用に優れた技術である。 SSNS構造による不均一性制御を用い、さらに埋め込み膜厚調整による広波長帯域動作・積層QD構造を作製した。この積層QD構造を活性層とする半導体レーザダイオードを試作し、室温・電流注入によるT-およびO-バンド帯での>75nmに渡る超広波長帯域レーザ発振動作に成功した。ここで開発した不均一性制御QD構造による広波長帯域光源デバイスは、今後、光コンポーネント・モジュールとすることで医療光学機器の高精度化への貢献が期待される。
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