本研究では粒子径の異なる二酸化チタン超微粒子やチタニアゾルを熱還元処理し光触媒を作製した場合の(1)酸素欠陥形成(酸素引き抜き)、(2)異種元素のドープ、(3)結晶形の制御について明らかにする事を目的としている。平成20年度は上記(1)について調査する予定で熱還元処理装置を作製した。検討の結果、市販の二酸化チタン超微粒子では上記(1)を実現できる温度(〜400℃)での(1)の実現は難しく、粒子径の依存性もほとんどないことが分かった。 そこで計画を変更し、チタンテトライソプロポキシドの加水分解から得たチタニアゾルを原料として、電気炉による簡単な熱還元処理で上記(1)と(2)を同時に実現できるかどうかをまず検討した。(2)を検討するにあたり、加水分解時に使用する蒸留水の代わりにフッ化アンモニウム水溶液を用いた。得られたチタニアゾルを乾燥後、水素雰囲気下350〜850℃で2時間熱還元処理を行い、可視光吸収特性を調査した。異種元素ドープ源のないチタニアゾルを500℃以上で熱還元処理したところ、波長400nm以上の可視光吸収が増加したことから、500℃以上で(1)が実現できたと考えた。次に粉末試料をガラス基板上に薄膜化し、波長660nmの可視光を照射してメチレンブルー脱色性能を調査した。異種元素ドープ源(NおよびF)のあるチタニアゾルを500℃以上で熱還元処理したところ、ドープ源のない場合に比べてよく脱色することが分かり、可視光照射下での光触媒活性が向上したことを確認した。 なお、本年度に購入した光触媒性能評価装置のNO標準ガス流通試験を行った。粉末試料の薄膜化手法を確立できたので、平成21年度はこの装置を用いたNO酸化試験について検討を進めるとともに、(1)と(2)を同時に実現する熱還元処理方法についてより詳細に検討し、最適化を図る予定である。
|