本研究では粒子径の異なる二酸化チタン超微粒子やチタニアゾルを熱還元処理し光触媒を作製した場合の(1)酸素欠陥形成(酸素引き抜き)、(2)異種元素のドープ、(3)結晶形の制御について明らかにする事を目的としている。平成22年度は(1)と(2)の同時実現について流動層滴下熱処理法を検討し、流動層温度、チタニアゾル濃度、空等基準ガス速度を変化させた場合に合成される光触媒の可視光活性について調査した(検討1)。また(3)について、チタニアゾル調製時の加水分解条件を変えた3種類の前駆体原料を用意し、電気炉にて熱還元処理を施した場合の温度や処理時間の影響について検討した(検討2)。 検討1において、生成物は流動層温度923Kまでアナターゼ型を維持し、N、Fのドープ割合は温度の上昇とともに減少した。また流動層温度は粒子表面の形状に大きく影響し、773Kが最も起伏に富んでいた。拡散反射スペクトルの吸光度は同一温度で処理した電気炉熱処理に比べ可視光から紫外光の広い波長領域で高かった。BET比表面積は773Kで103m^2/gと最大となり、同温度で電気炉熱処理により調製した試料に比べ約3倍大きく、可視光照射下のアセトアルデヒド分解試験でも活性が最も高かった。光触媒活性は流動層温度、ゾル濃度、空等基準ガス速度に大きく影響し、最適条件が存在することが分かった。 検討2において、Fを含有する原料は973Kまでアナターゼ相を維持したものの、可視光照射下のアセトアルデヒド分解試験で光触媒活性は低かった。そこで773Kで熱処理時間を2から0.5時間まで変化させ、比表面積を33から42m^2/gまで増加させたが、光触媒活性は逆に低くなり比表面積依存性は確認されなかった。Nドープのみを施したものは773Kにおいて光触媒活性が最も高く、アナターゼ相とルチル相の両結晶をもつものを973Kにおいて合成できたものの、光触媒活性は非常に低かった。
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