研究概要 |
本研究は,陽極接合法を利用してガラス中へ金属元素を導入し,金属微粒子の分散を図ることで,ガラスのレーザ加工特性を大幅に向上させることを目的としたものである.特に多種の金属元素を導入することにより,ガラス内部に光吸収特性の異なる複数の領域を形成し,多波長での加工や,目標加工形状に柔軟に対応可能なレーザ加工用ガラスの製作を試みた,平成21年度の実施内容は以下の通りである,銀,銅を導入元素とし,ホウケイ酸ガラスにそれぞれ単体で導入した場合の光学特性,レーザ加工特性を調査した.その結果,両元素添加ガラスには紫外域での光吸収率に差異があることが分かった.そこで,ナノ秒YAGレーザ第3,4高調波を用いて加工を行ったところ,銅添加ガラスではいずれの波長においても良好な加工痕が認められたのに対し,銀添加ガラスでは,第4高調波では良好な加工が行われたものの,第3高調波では(特に低エネルギー域で)ほとんど加工が行われなかった.そこでもし,ガラス内部深くに銅が,表面近傍に銀が添加された二層の導入領域を形成できれば,これらの加工特性の違いを利用して,ナノ秒レーザを用いたガラスの内部流路加工等が可能になるものと考えた.そこで,まずガラスに銅を添加した後,銀を導入する順次導入法を試みた.この銅/銀添加ガラスに対して,第3高調波を用いて加工を行ったところ,割れ・欠けが全く見られず,非常に平坦な底部形状を有する表面加工孔・溝は形成できたものの,ガラス内部のみの加工を行うことはできなかった.深さ方向のEPMA分析の結果,導入領域の全体に亘って,銅と銀の混合層の形成が認められ,銅単体の含有領域は形成されていないことが分かった.従って今後は順次導入の方法に再考が必要と考えられる.
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