自己組織化プロセスを制御するために、シリコン上の有機シラン系自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayre、SAM)の自己組織化メカニズムに及ぼす反応条件(末端官能基の対称性、反応温度、湿度)の影響について原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)、X線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、微小角入射X線回折測定(Grazing Incidence X-ray Diffraction、GIXD)、フーリエ変換赤外分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy、FT-IR)、水滴接触角測定などを用いて検討を行った。その結果、この有機シラン系SAMは、形成初期段階で分子同士の分子間相互作用による自己集合により、ドメイン構造を形成することがわかった。さらに、この形成初期段階でのドメイン構造のサイズは、成膜条件の制御により、ナノからマイクロサイズまで制御できることを明らかにした。この結果に基づいて、メチル・アミノ2元有機シラン系SAMを作製し、ケルビン力顕微鏡やゼータ電位測定により、2元SAMの表面特性の測定を行った。表面形状像との比較から、表面電位像中の暗い部分がメチル基に相当し、明るい部分がアミノ基に相当することが明らかとなった。アミノ基末端部の表面電位は、メチル基末端部よりもおよそ50mV高い。この表面電位の差は、分子の双極子モーメントに起因する。ケルビン力顕微鏡から分かるように、ドメインサイズの変化によりメチル・アミノ2元有機シラン系SAMの表面電位の分布が変化した。表面電位のゆらぎが表面特性に及ぼす影響を調べるために、ドメインサイズの異なるメチル・アミノ2元有機シラン系SAMのゼータ電位測定を行ったメチル基に起因するドメインサイズの増加に伴い、等電位点を示すpHが大きくなった。これらの結果から、ドメインサイズの制御により2元SAMの表面電位ゆらぎを制御できることを明らかにした。
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