研究概要 |
本研究では陽極酸化TiO_2ナノチューブ層の結晶化及びアニオン・カチオンドーピング手法を確立することを目的とし研究を行った. ナノチューブ層の結晶化に関しては, 通常のTiO_2ナノチューブ層創成ではフッ化物イオンを含む水溶液中での陽極酸化により達成されるが, 本年度は第1段階目の陽極酸化としてフッ化物イオンを含まない溶液で平らな結晶化(アナターゼ型)酸化チタンを形成し, その後, フッ化物を含む溶液中で陽極酸化するという2段階陽極酸化という新しい手法により結晶化TiO_2ナノチューブ層の創成を検討した. その結果, 1段階目の陽極酸化において20V以上の電圧を印加するとアナターゼ型TiO_2層が形成するが電圧が70V上であるとTiO_2層の絶縁破壊が起こりマクロ孔が生成するため, 1段階目の陽極酸化条件を20V以上70V以下と設定し, 2段階目の陽極酸化条件の探索を行い, 極微量フッ化アンモニウムを含む溶液中で陽極酸化することによりTiO_2ナノチューブ層創成に成功した. しかしながら, X線回折解析により, 形成したTiO_2ナノチューブ層はアモルファスであり, 1段階目に形成したアナターゼ型TiO_2層から形成したTiO_2ナノチューブ層において今回検討した電気化学条件(特に, 電圧条件の制御)では第1段階目に達成した結晶構造を第2段階目に引き継ぐことができなかった. 現在, その他の電気化学条件について検討を行っている. 一方, アニオン・カチオンドーピングでは様々な窒素量を有するTi合金をアーク溶解にて作製し, 作製した合金を陽極酸化することにより, 窒素含有量に依存して, 形成する酸化物層の形態が変化し, 10at. %以上窒素を添加すると, 酸化物層の形態はナノチューブ状からポーラス状へと変化することを明らかにした. 今後は組織制御による均一酸化物層の創成と形成した酸化物層の光電気化学特性の評価を行う.
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