陽極酸化により形成したTiO_2ナノチューブはアモルファスであるため光電変換効率が低いことやTiO_2が可視光で応答しないことが光触媒として用いる際に問題であった。そのため、熱処理やイオン注入など、陽極酸化後の処理が必要とされていた。本研究では、陽極酸化のみで結晶化TiO_2ナノチューブの創製と可視光応答化に向けたプロセス探索を行った。結晶化に関しては、陽極酸化に用いる溶液温度の影響について検討した。TiO_2ナノチューブの形成を水溶液もしくは有機溶媒を用いて行った結果、水溶液を用いた場合は溶液温度によらず形成したTiO_2ナノチューブはアモルファスであったが、有機溶媒を用いた場合には、溶液温度を60℃まで上昇させて陽極酸化を行った際に結晶化したTiO_2ナノチューブを形成することが分かった。また窒素含有チタン合金の陽極酸化により形成した酸化皮膜へ窒素をドープすることによる可視光応答発現に関する検討では、昨年度、作製した窒素含有チタン合金上にも、チューブ構造もしくはポーラス構造を有する酸化物層を形成することを明らかにしたが、合金組織が均質でなかったため形成した酸化物の形態は場所により大きく異なることを示した。本年度は、窒素含有チタン合金に均質化熱処理を施し、組織を均一化することにより試料全体に均一な酸化皮膜を形成することができ、その際にも形成する酸化物層の形態は水溶液中での陽極酸化後には、窒素含有量が3at.%まではチューブ構造、それ以上の窒素量ではポーラス構造となることが明らかにした。さらに形成した酸化物層の可視光応答性を評価した結果、窒素含有量が1~3at%のとき、可視光応答するが、それ以上の含有量では可視光応答しないことが分かった。
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