研究概要 |
室温付近で良好な熱電特性を有するBi_2Te_3系材料は,結晶構造に由来する異方的な熱電物性を持つ.特に電気抵抗率においては六方晶表示した場合のc軸方向に大きく、c面内で小さいことから,結晶配向制御による低抵抗化が高性能化への課題であり,簡便な手法で配向性を向上させる技術が望まれている. 本研究課題では,高性能方向に優先方位を有する材料作製を行うための結晶成長法として,スライド・ボート法による液相成長プロセスを開発した.スライドボート法は液相成長法の一種であり,原料室に仕込んだ原材料を溶融させた後,スライダを移動させることにより基板上に融体を移動させ,結晶成長を行う方法である.本年度は,マイカ,サファイア基板上にスライドボート法を用いた材料作製を行った.さらに,上記手法と並行して、焼結体および焼結体を塑性加工したものを作製し,構造・物性の比較を行った. スライドボート法によりマイカおよびサファイア上に成長させた結晶は,基板と平行に高性能面が揃っていることが確認され、配向度は焼結体および焼結体を塑性加工したものより顕著であった。高配向により,本手法によるp型Bi_<0.5>Sb_<1.5>Te_3のホール移動度は、同程度のキャリア濃度を有する焼結体と比較して室温で1.8~2倍程度,20Kでは8倍程度の大きな値を示した.高移動度により低抵抗化が実現され,室温における出力因子は同程度のキャリア濃度を有する焼結体と比較して約1.3~1.5倍程度向上した.これら配向,物性は基板を変えても変化せず,また温度,雰囲気等,作製条件が同じであれば,ほぼ同等の性能が得られることも確認した.以上,本研究のプロセスによる,熱電性能が高性能となる方向に結晶配向したBi_2Te_3系材料が簡便かつ安定に作製可能なことが示された.
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