ナノメートルサイズの微細孔であるナノポアは、近年高性能DNAシーケンサ開発の際に重要な要素として注目されている。本研究では、化学気相堆積法(CVD)によるSiC/Si(100)ヘテロエピタキシャル成長の際に導入される{111}ファセットのピット形成を応用した、シリコン半導体ナノボアの新しい形成技術の開発を目的としている。本年度はピットおよびナノボア密度のSiC成長条件依存性およびSOI基板裏面のエッチング加工に関する研究を行った。SiC成長にはパルスジェットCVD装置を用い、高純度モノメチルシランガスジェットをパルス幅100μsとし、周波数および照射数を変化させてSOI(100)基板表面へ照射した。基板温度900℃にて照射した場合、いずれの条件においてもピットが確認され、密度はおよそ10^8/cm^2であることがわかった。またピット密度はパルス周波数が一定の場合、照射数依存性は見られずほぼ一定となるが、周波数が増加するとポア密度が減少することがわかった。ピット形成は、SiC形成時に基板Si原子の外方拡散によって生じるため、SiC成長初期の核生成密度に依存する。したがってパルス照射条件を変化させることにより核生成密度およびピット密度をコントロール可能であることがわかった。さらにバッファードフッ酸により、ピット先端より埋め込み酸化膜層除去しナノボアを形成した場合、ナノボア密度はおよそ10^6/cm^2となることがわかった。次にSOI基板裏面の表面酸化膜の一部を除去し、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液にてエッチングした。走査型電子顕微鏡観察より{111}ファセットの異方性エッチングにより、先端付近を数μm〜数10μm角の領域での薄膜化を確認した。また一部薄膜化したSOI基板表面にSiC成長を行い、数10nmの貫通ナノボアの形成を確認した。
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