本研究テーマは、摩擦攪拌接合材において高温保持時に発生する、接合部組織の異常粒成長現象に関するものである。平成21年度は実施計画通りに、摩擦攪拌接合材の異常粒成長に及ぼす微細ナノ粒子の影響、あるいはツール回転数・接合速度・ツール挿入角度の影響を詳細に調査した。摩擦攪拌接合部に意図的に微細ナノ粒子を分散させ、その効果を確認した。さらに3次元摩擦攪拌接合装置を駆使し、施工条件がどのように影響を及ぼすのかを明確にすることができ、順調に成果を得ることが出来た。これらの成果は、信頼性を損なう原因となっている接合部組織異常粒成長の抑制機構解明の一助となる社会的意義の非常に高い研究成果であると考えられる。今後は、積極的に論文発表等の外部発信を行っていく。 一方、微細粒子の影響を調査する中で、超高純度アルミニウムを中心に行った研究において非常に興味深い成果も得られた。具体的には、摩擦攪拌接合部組織において、アルミニウムの純度が結晶粒微細化にどの程度寄与するのか、さらに加工ひずみ・加工速度がどの程度、結晶粒微細化に影響を及ぼすのかを明確にすることができた。これらの結果と他の加工熱処理による結果とを包括的に解析し、アルミニウムの結晶粒微細化メカニズムを検討した。結晶粒微細化は、金属材料のじん性向上を目的として採用される最も有効な手段の一つである。したがって、これら成果は摩擦攪拌接合材に留まらず、アルミニウム材料を工業材料として適用する際に、非常に有益なデータであると考えられる。
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