数~数十μmのWC粒子をNiやCoで結合させた溶射超硬合金皮膜に対して摩擦攪拌プロセスを検討した結果、金属結合相が~200nmのナノ組織になることが明らかとなった。これは、これまでに検討してきたAlやMgに対する結果(摩擦攪拌プロセス中に硬質粒子が存在する場合、母材の結晶粒がより微細化される)と一致している。特殊なバイモーダル組織(WC粒子+ナノ金属結合相)を有する溶射超硬合金皮膜は優れた機械的特性を示し、超硬合金焼結体と同等以上の極めて高い硬度(~2000HV)を示した。摩擦攪拌プロセス前の溶射超硬合金被膜には欠陥が散見されたのに対し、摩擦攪拌プロセス後の溶射超硬合金被膜にはほとんど欠陥が観察されなかった。摩擦攪拌プロセス中の塑性流動により、欠陥が消失したものと考えられる。また、SEM-EDXマッピングにより溶射超硬合金被膜/SKD11の界面近傍における元素分布を観察したところ、摩擦攪拌プロセス後のサンプルでは、SKD11基材に含まれるFeの溶射超硬合金被膜への拡散が確認された。当該結果は、摩擦攪拌プロセスが基材と溶射超硬合金被膜との密着性向上に資することを示唆している。
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