本研究により、鉄属金属ならびにその合金ナノ粒子の形成法を確立した。具体的には、まず、水晶振動子マイクロバランス(Quarts Crystal Microbalance: QCM)法と、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry: CV)を組み合わせ、鉄属金属ナノ粒子、そしてその合金ナノ粒子の析出電位を測定した。 この方法を用いれば、熱力学データに乏しい有機系溶媒中における金属の析出電位を直接知ることができる。さらに、溶媒の電位窓(安定な電位領域)の近傍、あるいはその外の電位に金属の析出電位があった場合にも、その電位を精度良く測定することができる。こうして得た金属の析出電位のデータと、反応溶液中における混成電位のデータを比較し、ナノ粒子形成条件の最適化を行った。さらに、最適化を行った鉄属金属ナノ粒子の形成プロセスを、10Tの強磁場中で行うことにより、通常球状で得られるナノ粒子の形状をロッド状に変化させることができた。そして、強磁場による形状制御の効果は、金属核の析出速度に大きく依存することが分かった。すなわち、アスペクト比の大きなナノワイヤを形成するためには、金属核の析出速度の小さな条件で反応を進行させることが重要であると考えられる。強磁場によるもう一つの効果として期待される、ナノロッドの規則配列化については今回うまく発現させることは出来なかったが、ナノサイズの鉄属遷移金属およびその合金の形状の制御には成功したと言える。本研究の方法はナノサイズ金属の新しい形状制御法として今後大いに期待でき、2009年9月7日に特許を出願した。
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