世界に先駆けて見出した過冷融液形成を伴う準安定系/平衡系の相変態の現象は、学術的に興味深い新しい凝固現象によって凝固組織が形成されるため、相変態機構、組織形成機構に関しては、未知な点が多い。これまでに、組織形成に関しては、結晶方位解析、三次元構造解析の結果から、共晶組織は不連続に成長するYAG相と連続的に成長するAl_2O_3相から成っていた。一方、平衡状態図を基に考えると、準安定共晶の溶解よって得られる融液は、平衡共晶系から見ると、YAG相に対して大きく過冷しているため、YAG核生成の駆動力は大きい。従って、YAG相が先行相として連続的に成長すべきである。YAG相に関して実験結果を説明することは困難である。本研究では、詳細な結晶方位解析から準安定共晶と平衡共晶が連成して作製されるAl_2O_3-YAG平衡共晶の組織形成の解明を行った。隣接するYAG相間には、30°以上の方位差が存在した。この結晶方位分布は、通常の固相反応で形成される多結晶体の分布とは全く異なっていた。また結晶方位関係を調べたところ、隣接する二つのYAG相間には、(211)双晶の関係にあることが明らかとなった。双晶の形成が数ミクロン間隔で非常に頻繁に起こっていた。これらの結果から、Al_2O_3-YAP準安定共晶の溶解とAl_2O_3-YAG平衡共晶の凝固が連成して形成されるAl_2O_3-YAG平衡共晶において、Al_2O_3相だけでなく、YAG相も双晶を形成しながら連続的に成長していることが明らかとなった。準安定共晶の溶解によって得られる過冷融液はYAG相に対して過冷しており、YAG相が連続的に成長する結果は、状態図からも矛盾なく説明できることが明らかとなった。
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