研究概要 |
長繊維と金属粒子からなるプリフォームを圧縮成形することにより, 短繊維強化MMC用プリフォームを簡便に作製すると共に, 溶浸圧力の低減および繊維配向性の制御が可能な新規なプリフォーム作製技術の開発を目的とした. 実験では, 純Al粒子と有機バインダから成るスラリーに, Al_2O_3とSiO_2の組成比が異なる種々のAl_2O_3長繊維を浸漬し, 繊維集合体に0.1〜1.25gの純Al粒子を分散させた. その後, 直径15mm, 高さ5〜10mmの円柱状に圧縮成形し, 短繊維プリフォームを作製した. 得られたプリフォームにおいて, 画像解析により切断された繊維の長さを測定した. Al粒子を導入して圧縮成形したプリフォームでは, 導入前と比較して多数の切断されたAl_2O_3繊維が観察された. また, 切断された繊維の量は, 繊維中のAl_2O_3量が増えるほど多くなった. また, 圧縮量を変化させた結果, 圧縮量が0%では, 繊維長さの分布に大きな偏りは見られなかったが, 圧縮量が25%以上では、約100μmの繊維が最も多く観察された. このことから, 所定の長さに切断するための臨界圧縮量が存在することがわかった. さらに, Al粒子を導入して圧縮成形したプリフォームと長繊維のみで圧縮成形したプリフォームを用いて短繊維強化MMCを作製し, MMCの硬さ試験を行った結果, 長繊維のみを用いたMMCでは, 組織中に溶浸不良が多く観察され, 硬さはマトリックス合金よりわずかに高い程度であった. 一方, Al粒子を導入した場合では, 溶浸方向に平行な断面の硬さが大きく向上した. これは, 圧縮成形により作製した短繊維プリフォームを用いることによって, 繊維が2次元的に配向し, 鋳造欠陥のほとんど存在しないMMCが得られたことを示している. 今後は, 分散させる金属粒子の粒径を変化させることにより, 繊維長さ及び繊維の配向性の制御パラメーターについて調査する.
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