研究概要 |
本研究では、異なった機能を有する結晶層を積み重ねた自然超格子構造を持つ硫化物を創製し、高い熱電変換効率を達成することを目的としている。 1.層状チタン硫化物(LnS)_XTis_2(Ln=希土類元素) (1)硫化チタンTiS_2 自然超格子構造の一層に用いる、TiS_2の合成に関する研究を行った。ルチル型TiO_2を、CS_2ガスを用いて、750℃で14時間硫化することで、CDI_2型TiS_2単相粉末の合成に成功した。作製したTiS_2粉末は、N_2雰囲気下でのTG-DTA測定より、室温〜600℃の温度範囲で安定であることが確認された。 (2)希土類硫化物NdGd_<1+X>S_3 自然超格子構造のもう一層に用いる、希土類硫化物の合成と熱電特性に関する研究を行った。まず、Ln_2O_3(Ln=Nd,Gd)粉末を、850℃の温度でCS_2ガスと反応させることにより、Ln_2S_3粉末を合成した。これら粉末とGdH_3粉末を混合し、1350℃の温度で加圧焼結することで、緻密で希土類元素量が過剰なNdGd_<1+X>S_3焼結体を作製することに成功した。 NdGd_<1+X>S_3は、n型のゼーベック係数を示した。熱電性能指数ZTはNdGd_<1.02>S_3のときに最大値を示し、680℃で0.51に達した。この高いZT値は、この材料が高温熱電材料として非常に有望であることを示している。 2.シェブレル相硫化物Cu_XMo_6S_8 シェブレル相硫化物は、Mo_6S_8クラスター層が基本構造であり、その間に様々な金属原子Mを挿入することができる。本年度は、MにCuを選択して、Cu、Mo、MoS_2の固相反応によりCu_XMo_6S_8を合成した。Cu_XMo_6S_8のゼーベック係数は、p型を示した。熱電特性は、Cu量を増やすことで改善され、ZT値は、Cu_<4.0>Mo_6S_8のときに680℃で0.4に達した。この材料もまた、高温熱電材料として有望である。
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