産業、民生、運輸部門において、我々は大量のエネルギーを廃熱として棄てている。熱電材料は、その廃熱を直接電気エネルギーに変換して回収できるために、大きな注目を集めている。本研究では、チタン硫化物とその類似硫化物において、自然超格子構造などのナノ空間を制御することによって、熱電特性を向上させた。 1. 二硫化チタン(TiS_2)は分解し易いため、焼結温度を十分に上げることができず、焼結密度の向上が困難であった。本研究では、分解を防ぐために、硫黄雰囲気下で焼結する方法を開発して、緻密な焼結体の作製に成功した。その結果、n型の熱電特性は大幅に改善され、中温域(400℃)で高い性能指数(ZT=0.4)を実現した。 2. Ti-sブロックの層間にSr-sブロックをインターカレーションする目的で、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)粉末を二硫化炭素(CS_2)ガスで硫化した。硫化粉末の結晶相をX線回折パターンで同定し、インターカレーション化合物(SrS)TiS_2の合成に成功していることを確認した。 3. シェブレル相硫化物において、その基本構造となるMo_6S_8クラスター間のナノ空隙に様々な金属を充填して、その熱電特性を評価した。その結果は、クラスター価電子数を大きくすることで、p型の熱電特性を大幅に改善できることを示唆している。 4. これまで、本研究では、酸化物をCS_2ガスで硫化することで硫化物を合成してきた。しかしながら、この方法には、CS_2ガスの分解に起因した不純物炭素が合成粉末中に残留するという欠点があった。本研究では、CS_2の代わりにチオシアン酸アンモニウムNH_4SCNを硫化剤として用いることで、不純物炭素の少ない硫化物の合成に成功した。 5. 開発したp型のシェブレル相硫化物とn型の希土類硫化物を用いて、18のp-n対から成る熱電発電モジュールを作製し、その動作を確認した。
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